鳥瞰図。どこかで一度は目にしたことがあるはずだ。
その飛びぬけた第一人者が、吉田初三郎である。
その着想、スタイル、膨大な作品数から
大正の広重と呼ばれた。
1884年に京都に生まれた初三郎は
「京阪電車御案内」今で言う観光案内路線図のようなものを
描いたのがきっかけで、鳥瞰図にのめりこんでいく。
折りしも、日本は大正昭和の観光旅行ブーム。
全国津々浦々をスケッチしてまわり、1800にも及ぶ
多種多様な鳥瞰図を描きあげた。
目にしたことにある人はお分かりの通り、
超デフォルメの世界。
人々の関心のある場所を強調して描く。
青森県八戸市の鳥瞰図でありながら、北を向けば
函館までが描かれている。
南を向けば、小さいながら富士山。
人の心の中の地図を描き出しているのだ。
湖が興味の的であれば、大きな湖。
古い町並みであれば、仔細に。
それを見て、人々は観光の心を膨らませていく。
だから、初三郎の鳥瞰図を見れば、
行ったことのない場所でも、目をつぶれば
いきいきと浮かび上がる。
これこそが、旅行の地図。ワクワクの地図。
それは、地図を見る人、旅行をする人の気持ちを
考えて制作していたからに違いない。
これこそが本来の旅行を提供するものの本道なはず。
小さきことを見る前に、
大きなことを見る構え。
それが見て取れる。
初三郎は、人に向かってそんなことを言っているような
気がする。
たとえ飛べなくても、心の中で想像はできる。
大事なことを教えられた。

