
CM界の怪ディレクター、吉田大八がとうとう長編映画を撮った。
本谷有希子の舞台の映画化である。
女のエゴ、自意識、妄想を得意とする本谷作品を
大八がどう映画にするか、興味津々で拝見した。
私もソウだったが、ほとんどの人が
若いうちは家族の大事さに気づいていない、
いや、気づこうとさえしていない。
まずは、自分がどうなるか?それが生きるテーマなのだから。
悪く言えば、家族でさえ、自分のために役立てようとする。
そんなことが、本質ではないが、
この映画のナビゲーターといったところだろう。
佐藤江梨子が、そんなとんでもない「おばか」を演じている。
血がつながっていない兄の役を永瀬正敏。
屈折した妹役を佐津川愛美。
しかしなんといっても、すごいのが永瀬の妻役の永作博美。
新橋のコインロッカー・ベイビーで、
孤児院で育ち、やっとのことで家族をもった、という
いわくつきの役柄だ。
殴られようが、そばつゆをかけられようが、3秒後にはニコニコ。
もちろん誇張された演技ではあるが、
映画の中で中心にドンと座っているようにしか見えない。
妹との関係から、妻を一度も抱いていない永瀬に対しても、
妻の座にしっかり座っている。
彼女がもっとも家族を象徴しているのかもしれない。
何がどうなろうと、家族はゆるぎない、と信じて疑わない心。
ソウ思い始めると、彼女のような存在はどこのうちにもいた。
確かにいた。だからこそ、家族は家族足りえた。
永作の役は、そういう信号を発していたのだろう。
吉田大八の最大の所業はこれなのだ!ソウ思えて仕方がない。
映画と漫画(漫画的撮影)の間を行き来するこの映画は
まさに、いまの日本映画の行く先を、暗示している。
ただし、初めての試みゆえ、説明過剰気味なところが惜しかった。
しかし、大八の映画監督としての未来は明るい。
それがなによりうれしかった。

