フランス・ドキュメンタリー映画の巨匠レイモン・ドゥパルドン。
日本ではほとんど見ることの出来なかった彼の作品だが、
「モダンライフ」で日本登場。
南仏の山間の村、セヴェンヌを舞台に、農民へのインタビュー。
ドゥパルドンは、
アンリ・カルティエ・ブレッソンや、ロバート・キャパが立ち上げた
写真家集団マグナム・フォトに所属。
10代から世界中を飛び回り、
ピューリッツアー賞を受けるなど、輝かしい経歴を持つ写真家。
その彼が、10年もかけて撮影したのがこのドキュメンタリー映画。
畑を耕す農民。
牛や羊を飼う農民。
彼らを毎年訪れてのインタビュー構成だ。
その姿は、掛け値なしにリアルそのもの。
農民たちは、
彼の質問にしか答えない。
しかも、はい、か、いいえ。
とぎれとぎれな会話が、かえって、
大地としか向き合ってこなかったことを、強く印象に残す。
彼が訪れるたびに、
牛や羊を手放す人、
命を落とす人、
年老いて仕事が出来なくなる人。
村は少しずつ変わっていく。
幸運にも、町の女性と結婚できても
その兄弟たちからは祝福されない。
頑固に自然とだけ生きてきた人たちの歴史がのぞく。
その中に若い家族の姿があった。
小さな子供がふたり。
インタビュー:「大きくなったら何になりたいの?」
子供:「パパみたいに」
そのとき、母親が会話に割り込んで、
母:「もう農民は必要とされなくなった時代なのよ」
この言葉に衝撃的だった。
都会に住む私たちにはわからない苦労をしながらも
農業を選んできた彼ら。
その彼らが発する言葉が、農業への失望。
また、からだが動かなくなるまで羊を追う、
と言っていた老人までが、命と同じくらい大事な羊を売る。
そして、ほんとうに動けなくなる。
こういう現実を私たちは知らない。
日本も同じ状況に違いない。
しかし、農民がいなくなれば、食物はなくなり
化学でつくった食べ物を食べなければならなくなる。
もちろん、そんなことは起こらないだろうが、
では、一体誰がやるのか?
映画は、訪れる季節によって、風景が変わり
都会人には、美しさだけが目に焼き付く。
自然とは何だろう?
そこで生きる私たちは?
東京という都会に住んでいる私にできることは?
誰が考えても、
経済主体の社会は、ゆがみ始めているのはわかる。
では、どうするのか?
唯一の救いは、」こういう映画や本、そして考え方が
世の中に頻繁に現れるようになったこと。
それこそ、みんなの思いの現れなのかもしれない。
そんなことを感じた映画だった。

